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法人の「変更登記」を忘れた場合のリスクとは?バーチャルオフィスへ移転登記するメリットも解説

会社法に基づき、株式会社や合同会社の登記内容に変更があった場合は「変更登記」の手続きを行う必要があります。変更登記には期限が定められていますが、実際には後回しにして期限内に申請できなかったり、忘れたまま放置してしまったりするケースも少なくありません。

もし変更登記を行わずに登記内容と実情が異なっていると、会社の信用が大きく損なわれます。また、状況によっては過料が発生する場合もあるため注意が必要です。

そこで、今回は一般的に忘れられやすい変更登記の種類や行わない場合のリスクを解説しながら、変更登記にかかる費用もご紹介します。また、変更登記のタイミングに合わせて本店所在地の見直しを検討している方に向けて、費用を抑えて事業用拠点を設けられる「バーチャルオフィス」の魅力についてもまとめました。

円滑な会社経営に向けて、ぜひ参考にしてみてください。

忘れられやすい変更登記の種類

会社の登記簿には、以下のような事項が記載されています。

・商号(会社名)
・本店および支店の所在地
・設立年月日
・事業目的
・資本金の額
・発行可能株式総数
・発行済株式の総数・種類・数
・役員の氏名
・代表取締役の氏名および住所


上記のうち1点でも変更が生じた場合は変更登記を行う必要がありますが、一般的には下記3点の手続きが忘れられやすい傾向があります。

1.役員の重任登記や氏名変更

取締役や監査役などの役員にはそれぞれ任期があり、原則として取締役の場合は「2年」、監査役の場合は「4年」と定められています。

任期満了後に同じ人が役員を継続する場合でも、“一旦退任し、再度就任した”といった形で変更登記する「重任登記」を行わなければなりません。

しかし、この規定を認識していなかったり忘れてしまったりして、そのまま放置されるケースも多くみられます。

また、役員の氏名が結婚・離婚等で変更になった場合も変更登記手続きが発生しますが、こちらもうっかり失念する方が多い傾向があります。

2.代表取締役の住所変更

登記事項には代表取締役の住所も含まれるため、引越し等で住所が変わった場合はすみやかに変更登記を行う必要があります。しかし、代表取締役の住所が登記簿に掲載されていること自体を覚えていない方も多く、変更登記申請が忘れられてしまう事例が多発しています。

3.事業目的の変更

原則として、法人は登記簿に記載されている目的に沿った事業活動のみ行うことができます。そのため、事業拡大によって新規事業に参入したり、既存の分野から撤退したりする場合には「目的変更登記」を行う必要がありますが、こちらも認識不足によって忘れられるケースが多い印象です。

ちなみに、目的変更登記の前には必ず株主総会の特別決議を行い、株主からの了承を得てから変更登記へと進みます。

変更登記せずに放置するとどうなる?

法人変更登記の期限は、会社法第915条第1項により「変更が生じてから2週間以内」と定められています。この期限を過ぎて変更登記を行う場合は「登記懈怠(かいたい)」扱いとなり、下記のようなリスクがある点に注意が必要です。

・100万円以下の過料が科せられるリスク
・会社の信頼度がダウンするリスク
・解散登記が行われるリスク(重任登記や役員変更登記を忘れた場合)


上記の具体的な内容について、以下で詳しく見ていきましょう。

・100万円以下の過料が科せられるリスク

登記懈怠とみなされると、場合によっては代表取締役に「100万円以下の過料」が科せられる恐れがあります。

ただし、このペナルティに関する明確な基準は定められておらず、期限を1年以上過ぎてしまっても過料が科せられないケースもあれば、数か月未満の遅延でも過料の制裁を受けるケースもあります。まずは遅延しないように気をつけることが重要ですが、もし期限を過ぎてしまった場合はできるだけ早く変更登記申請を行いましょう。

・会社の信頼度がダウンするリスク

変更登記を行わずに放置していると、会社の信頼が損なわれるリスクがある点にも注意が必要です。というのも、他社との契約時や業務提携時などに会社の登記簿が調査されることも多く、その際に申告した情報と登記簿上の情報に相違がある場合は信頼性低下に繋がります。

・解散登記が行われるリスク(重任登記や役員変更登記を忘れた場合)

役員の重任登記や変更登記を行わないまま最後の登記日から12年を経過した場合、法務局において毎年行われる休眠会社整理作業の対象となってしまいます。その場合は法務大臣による公告および登記所から通知が届きますが、その後も変更登記手続きを行わずに放置していると会社が解散したものとみなされ、知らないうちに会社が消滅してしまうため注意が必要です。

変更登記において発生する費用について

ここでは、法人変更登記時にかかる登録免除税の金額をまとめました。

役員に関する変更登記(重任登記や氏名変更など) 1件につき30,000円(資本金1億円以下の会社については10,000円)
商号変更や本店移転、事業目的の変更など 1件につき30,000円

なお、資本金増加の登記や合併・組織変更等の登記を行う場合は、資本金の金額によって登録免許税が変わります。また、司法書士などの専門家に手続き代行を依頼する場合は、別途代行手数料が発生します。

登記先住所としておすすめしたい「バーチャルオフィス」の魅力をご紹介

会社経営にあたって「コスト削減」を目指したい場合は、本店所在地をバーチャルオフィスの住所へ移転登記することを検討されてはいかがでしょうか。バーチャルオフィスとは、物理的なスペースではなく事業用の住所を借りられるサービスで、主に下記のようなメリットを得られます。

・オフィスを借りるよりも圧倒的にコストカットできる
・自宅の住所で登記申請するよりも安全性が高い
・ミーティングスペースを借りられたり、登記手続きのサポートを依頼できたりする場合もある


それぞれの具体的な魅力について、以下で詳しく解説します。

・オフィスを借りるよりも圧倒的にコストカットできる

オフィス物件を賃貸している場合は、毎月数万円~数十万円程度の家賃が発生します。もちろん事業運営にあたって物理的なスペースが必要であればオフィスが必要ですが、たとえば自宅のパソコン等で事業活動を行える場合など、「オフィスをなくしてコストカットしたい」とお考えの方もいることでしょう。

バーチャルオフィスは、まさにそのような方に適した大変便利なサービスです。5,000円~10,000円程度の登録料と数千円程度の月額料にて法人登記に適した住所を借りられるため、オフィスを賃貸する場合に比べて大幅な費用削減が叶います。

・自宅の住所で登記申請するよりも安全性が高い

コスト削減に向けてオフィスを撤退し、自宅の住所への移転登記をお考えの方もいるのではないでしょうか。物件によっては自宅の住所で法人登記を行えるケースもありますが、自宅住所での登記申請には安全面のリスクが伴う点に注意が必要です。

というのも、登記申請した本店所在地は公開情報に指定されており、国税庁の法人番号検索サイト等に記載されます。つまり、自宅住所へ移転登記をするとその住所が一般公開されてしまうため、住所が悪用されたり、誰かが突然訪ねてきたりする危険性があります。

バーチャルオフィスを利用すれば、もちろんバーチャルオフィスの住所が公開されることになり、自宅のプライバシーが脅かされることはありません。安全性の高い環境で事業活動を行えることから、自宅で活動する際は自宅住所ではなくバーチャルオフィスの住所への移転登記がおすすめです。

・ミーティングスペースを借りられたり、登記手続きのサポートを依頼できたりする場合もある

バーチャルオフィスのなかには、事業用の住所を貸し出しているほかに「+αのサービス」を行っているところも存在します。たとえばミーティングスペースのレンタルや、登記手続きのサポートなどです。

特に自宅を拠点に事業活動を行う場合は、ミーティングスペースを借りられるとクライアントとの打ち合わせ等に大いに役立ちます。また、変更登記を自力で行うことに不安を感じる場合は、登記手続きのサポートサービスを利用することで安心かつスムーズに申請を進めることが可能です。

そのほかにも、バーチャルオフィスによってはFAX番号をレンタルできたり、バーチャルオフィスに届いた郵送物を自宅へ転送してもらえたりする場合もあります。まずはご自身に必要なサービスについてじっくりと検討し、そのニーズにマッチしたバーチャルオフィスを選ぶことで、物理的なスペースがなくても快適に事業活動を行えるでしょう。

まとめ

登記事項に変更があった場合は「変更登記」の手続きが必要ですが、日々の業務に追われてうっかり忘れてしまうケースも少なくありません。変更登記を行わないことによって会社の信頼度が低下したり、過料を科せられたりすることのないように、しっかりとスケジュールを組んだうえで期限内に済ませるようにしましょう。

なお、会社経営を円滑に進めるためには登記事項の見直しを定期的に実施し、「常に会社にとって理想的な状態へとブラッシュアップする」ことも大切です。その際にはバーチャルオフィスへの移転登記を行うなど、ランニングコストを抑えた事業運営を目指してみてはいかがでしょうか。

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