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子会社を設立するメリット・デメリットは?手続き手順やバーチャルオフィスの活用方法もご紹介

会社の事業が一定規模に達した際に、さらなる成⾧を目指すことを目的として 「子会社の設立」を検討している方もいるのではないでしょうか。子会社を設立 すると「節税効果」や「意思決定の迅速化」といったさまざまな魅力があり、成 功事例も多くみられます。

しかし、メリットだけでなくデメリットも存在するため、実際に動き出す前に しっかりと確認しておくことが大切です。まずは子会社に関する知識を深めて、 自社に適した選択なのかどうかを慎重に見極めるとよいでしょう。

そこで、今回は子会社設立の概要やメリット・デメリット、注意点を解説しなが ら、設立する手順も詳しくまとめました。さらには「なるべく費用を抑えて子会 社を設立したい」とお考えの方におすすめしたい、バーチャルオフィスの魅力に ついても併せてご紹介します。

そもそも「子会社」とは

「子会社」は、法令によって以下の通りに定められています。

会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がそ の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの

引用:会社法第2条3号

具体的には議決権の50%超を親会社に保有され、経営方針なども親会社の支配下にある会社を子会社といいます。

子会社の種類

子会社は、株式の保有状況によって「完全子会社」「連結子会社」「非連結子会 社」の3つの種類に分類されています。それぞれの特徴は以下の通りです。

・完全子会社:親会社に議決権のある株式を100%保有されている会社
・連結子会社:親会社に議決権のある株式の過半数を保有されている会社
・非連結子会社:子会社ではあるが連結子会社ではない会社

ちなみに非連結子会社にはいくつかの要件があり、「親会社による支配が一時的 である会社」「連結することによって利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れの ある会社」「重要性の乏しい会社」と認められた場合にのみ該当します。

子会社を設立するメリット

続いて、子会社を設立する主なメリットを5つご紹介します。

1. 節税効果を期待できる

子会社を設立する最大メリットといえるのが、節税効果です。税金を抑えられる 理由はいくつかあるため、大まかな概要を以下で押さえておきましょう。

・法人税・地方法人税における軽減税率の適用を受けられる

法人に課せられる法人税や地方法人税は、利益の増加とともに税率が増加する仕 組みになっています。そのため、子会社の設立によって複数の会社に利益が分散 されることで税率が下がり、節税につながります。

・交際費の損金算入限度額が増える

子会社を設立すると、グループ全体における交際費の合計金額が増えます。その ため、本来は損金に算入できなかった費用を損金に算入できる可能性があり、親 会社と子会社に経費を振り分けることによって支払う税金を抑えることが可能で す。

・子会社における消費税の納税義務が免除される可能性がある

子会社を設立して所得を分散させることで、子会社側で発生した消費税が原則2 年間免除さられる可能性があります。

・子会社に転籍をした従業員の退職金を損益として計上できる

親会社の従業員が子会社に転籍する場合、従業員に退職金を支給することが可能 です。その退職金は親会社の損益として計上できるため、節税につながります。

2. リスクヘッジを図れる

リスク対策になることも、子会社を設立する魅力です。

もしも業務上で何かトラブルが発生した場合、内容によっては業務停止命令が下 される可能性があります。業務停止命令とは最⾧で24ヶ月間、業務の全部あるい は一部の停止を命じるもので、ひとつの会社ですべての事業を行っている場合に 被る影響は計り知れません。

しかし、子会社を設立して事業を分散していれば、一方が業務停止を命じられた 場合でも、もう一方は事業を継続できます。すべての事業が一気に停止すること はないため、損失をある程度抑えることが可能です。

3. 迅速な意思決定が可能

会社の規模が大きくなると意思決定のスピードが落ちる傾向がありますが、子会 社を設立することによって迅速な意思決定が可能になります。コンパクトな組織 のほうが承認にかかわる人数が少ないことから、よりスピーディーにプランを進 められるでしょう。

4. 損益を把握しやすくなる

損益管理がしやすくなることも、子会社を設立するメリットのひとつです。

事業拡大によって会社の規模が大きくなるにつれて、各部署の業績を把握しづら くなる傾向があります。しかし、子会社の設立によって親会社・子会社の損益管 理を別々に行うことで、各事業の損益を把握しやすくなり、グループ全体として の業績向上に向けて適切な対策を講じられます。

5. 事業継承をスムーズに行える

子会社の設立は、事業継承の観点においても大きなメリットがあります。

というのも、もしも後継ぎの候補者が複数人いる場合、選ばれなかった人から反 発が起こる可能性がある点に注意が必要です。場合によっては事業継承をきっか けに社内に不和が発生し、その後の経営に支障をきたす恐れもあります。

その点、子会社を設立すれば後継者選出の際に複数の人を指名できるため、より スムーズに事業継承を行えるでしょう。

子会社を設立するデメリット

子会社の設立にはさまざまなメリットがある一方で、注意したいデメリットも 存在します。

1. 設立時の費用やランニングコストが発生する

子会社を設ける際には、設立時に費用が発生する点に注意しましょう。定款の 作成や登記手続きなどに費用がかかるほか、もしも弁護士や税理士と顧問契約 する場合は契約費用がかかります。

また、子会社で別途事務所などを借りる場合は、敷金・礼金などの初期費用や 家賃などのランニングコストも発生します。あらかじめ設立時にかかる費用や ランニングコストの試算を行い、節税効果や業務効率化といったメリットと天 秤にかけながら「子会社を設けるべきか」を慎重に判断することが大切です。

2. 損益通算できない

完全な支配関係にある子会社を除き、親会社と子会社の損益通算は行えない点 にも注意が必要です。

損益通算とは「黒字所得から赤字所得を差し引くこと」で、黒字と赤字を相殺 できると税金を効果的に軽減できます。しかし、別々の会社になると損益通算 ができなくなり、仮に子会社が赤字であったとしても、親会社や他の子会社が 黒字だった場合は黒字分の法人税を納めなければなりません。

そうなると、グループ全体としての税負担が大きくのしかかってくるため、赤 字所得が出ないようにより一層気を引き締めて経営に臨むことが求められます。

子会社を設立する際の注意点

子会社を設立するメリット・デメリットを把握したところで、設立時の注意点 についても押さえておきましょう。

親会社が子会社を設立する際には、「事業目的の同一性」が求められます。 新規で会社を設立する場合の発起人は<個人>ですが、子会社を設立する場合の 発起人は<法人>です。発起人が法人の場合、事業目的にある程度の同一性がな ければ定款の認証ができず、子会社を設立することはできません。

たとえば親会社が「不動産賃貸業」を運営している場合、子会社を「不動産賃 貸管理業」とするなど、同一性のある事業目的にすることが重要です。

子会社を設立する流れ【5STEP】

子会社の設立に興味をお持ちの場合は、申請手順についても把握しておきま しょう。基本的には通常の会社設立と同様に、以下の流れで手続きを進めます。

【STEP1】基本事項の決定

子会社の設立に向けて、以下のような基本情報を決定します。

・事業目的
・商号
・本店の所在地
・資本金・出資金の額
・事業年度 など

【STEP2】定款の作成

基本事項が決まったら「定款」を作成します。定款とは『会社の憲法』ともい える需要な書類なので、できれば専門家のアドバイスを受けながら慎重に作成 することをおすすめします。

なお、定款には「絶対的記載事項」として必ず記載しなければいけない事項が 定められており、ひとつでもその記載が欠けると定款全体が無効になるため注 意しましょう。

ちなみに株式会社の場合は、絶対的記載事項のほかに「相対的記載事項」や 「任意的記載事項」も定めることが可能です。それぞれの具体的な概要につい ては以下をご確認ください。

〇絶対的記載事項

絶対的記載事項は、先述の通り「会社を設立する際に必ず決めなければならず、 定款にも記載しなければならない事項」です。株式会社の場合は以下の事項が 該当します。

・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所

〇相対的記載事項

相対的記載事項は、「効力を生じさせようとするには必ず定款に記載しなけれ ばならない事項」です。たとえば以下のようなものが該当します。

・現物出資に関する規定
・発起人の報酬に関する規定
・財産引受に関する規定
・設立費用に関する規定
・株式の譲渡制限に関する規定 など

〇任意的記載事項

任意的記載事項は、定款に記載するか否かは任意ではあるものの、記載してお くとルールとして強い拘束力を持つことになる事項です。たとえば以下のよう なものが当てはまります。

・取締役や監査役の人数
・役員報酬の決定方法
・株主総会の招集時期 など

【STEP3】定款の認証

定款を作成したら、設立する法人の本店所在地を管轄する公証役場へ出向いて 認証手続きを行います。

※合同会社の場合は定款の認証は不要です。

【STEP4】資本金・出資金の払い込み

株式会社の場合、発起人は引き受けた株数に相当する金額を発起人の口座に振 り込みます。

【STEP5】登記申請

定款の認証や資本金・出資金の払い込みが完了したら、本店所在地を管轄する 法務局などに登記申請を行います。

子会社の設立時には「バーチャルオフィス」がおすすめ!

子会社の設立時には子会社用の本店所在地を用意する必要がありますが、もし も「なるべく費用を抑えたい」とお考えならバーチャルオフィスを利用すると よいでしょう。

バーチャルオフィスとは文字通り「仮想の事務所」で、物理的なスペースでは なく事業用の住所をレンタルできるサービスです。主に以下のようなメリット があり、「登記用に住所を借りられれば新たなオフィスは不要」といったケー スに大変おすすめです。

【メリットその1】賃貸物件を借りるよりもコストカットできる

子会社用に事務所を借りるという選択肢もありますが、その場合は契約時にか かる初期費用(敷金・礼金など)をはじめ、毎月の家賃や光熱費といったラン ニングコストがかかります。そのため、特に物理的なスペースを必要としない 場合などに「オフィスは必要ないのに高額なコストがかかってしまってもった いない」と感じることもあるでしょう。

それに対して、バーチャルオフィスの場合は「登録費用」や「毎月の利用料 金」のみで利用でき、賃貸物件を借りるよりも大幅にコストカットできます。 目安としては月に数千円の負担で済むため、少ない費用負担によって子会社設 立を実現することが可能です。

【メリットその2】自宅住所を本店所在地にする際のリスクを回避できる

「なるべく費用を抑えたい」と考えて、発起人の自宅住所を子会社の本店所在 地に設定するケースもあるかもしれません。しかし、物件によってはオーナー の意向や管理規約等によって「事業用としての使用は不可」としているところ も多く、それを知らずに法人登記を行うと後にトラブルに発展する場合もある ため注意が必要です。

一方、バーチャルオフィスであれば法人登記に適した住所をレンタルできるた め、スムーズに登記申請手続きを進められます。また、本店所在地として申請 した住所は国税庁の「法人番号公表サイト」などで誰でも閲覧できますが、自 宅住所が公開されるリスクもないことから自分や家族のプライバシーの保護に も役立つでしょう。

まとめ

子会社を設立すると「節税」や「リスクヘッジ」などにメリットがある半面、 「初期費用やランニングコストがかかる」「損益通算できない」といった注意 点もあります。子会社を設立するほうがいいかどうかは会社の状況や経営者の 考え方によるため、税理士などの専門家に相談しながら慎重に検討するとよい でしょう。

もしも少ない資金で子会社を設立したい場合は、ぜひバーチャルオフィスの活 用も視野に入れてみてください。ゆとりを持たせた経営は、きっと子会社の成 功を後押ししてくれるでしょう。

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