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「納税管理人」とは?選定が必要なケースや手続き内容、バーチャルオフィスの活用方法を解説

日本に不動産を所有している海外在住の方や、急に海外に移住することになった 方など、日本で納税を行う必要がある場合は「納税管理人」を選定します。

納税手続きを代行してもらうために大変重要なステップですが、「納税管理人を どのように選べばいいのかわからない」「どういった手続きが必要?」などと疑 問や不安を感じている方もいるかもしれません。

そこで、今回は「納税管理人」に焦点を当て、概要や選定が必要なケース、手続 き内容といった基礎知識をまとめました。さらには、自分自身で納税関連書類を 管理したい場合に向いている「バーチャルオフィス」の活用方法についても併せ てご紹介します。

ぜひ「納税管理人」に関する知識を深めて、日本での納税手続きを適切に進めて いきましょう。

「納税管理人」とは

まずは、納税管理人の概要をしっかりと押さえておきましょう。

納税管理人とは、「海外に居住する納税者に代わって日本での納税事務処理 を行う人」のことをいいます。納税管理人が行う主な手続きは以下の3つです。

・非居住者の確定申告書を提出し、各種税金を納付する
・国税の還付金を受け取る
・税務署から送付される書類を受け取る

納税者が海外に居住している場合、役所が納税者の居住地宛てに書類を送り づらかったり、納税者本人が日本で手続きを行うことが難しかったりと不都 合が生じる傾向があります。そのため、納税者は納税管理人を選定して役所 に届け出ることが必要です。

納税管理人が必要なケース

納税管理人を選定する必要があるのは、主に下記の5つのケースです。

・海外在住で、日本で所有している不動産に関わる収入がある場合
・海外在住で、日本国内にて株式を売却した場合
・海外在住だが、住民税や固定資産税といった地方税の納税義務がある場合
・海外在住だが、贈与税や相続税が発生した場合
・海外に移住するまでに一定額の所得がある場合


それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。

1. 海外在住で、日本で所有している不動産に関わる収入がある場合

海外に在住しながら日本に不動産を所有しており、その不動産から家賃収入を得 ていたり、不動産を売却したりして所得が発生した場合は日本での税務申告や納 税が必要です。

2. 海外在住で、日本国内にて株式を売却した場合

海外に在住しながら日本国内で株式を売却した際には、課税対象となるため日本 での税務申告や納税手続きが発生します。ただし、特定口座の場合は基本的に申 告不要です。

3. 海外在住だが、住民税や固定資産税といった地方税の納税義務がある場合

1月1日時点で日本国内に居住していた場合は、住民税の納税義務が発生します。 また、固定資産税も個人・法人問わず1月1日時点での不動産所有者に課税されま す。

4. 海外在住だが、贈与税や相続税が発生した場合

親が亡くなって財産の相続を受ける際に発生する相続税や、個人から財産を譲り 受ける際に発生する贈与税は、海外に居住していても日本での納税義務が発生し ます。

ただし、下記条件の場合は該当しません。

・相続人・受贈者が外国籍(日本と外国の二重国籍の場合を除く)であり、非居 住者である
・相続人・受贈者と被相続人・贈与者の両者が、過去5年以内に日本での住所が ない

5. 海外に移住するまでに一定額の所得がある場合

海外に移住する年の1月1日から出発までの間に、日本国内で一定額の所得を得ている場合は所得税が発生します。基本的には出国の日までに確定申告を済ませて税金を納付する必要がありますが、確定申告書の提出や納付ができない場合は納税管理人の選任が必要です。

納税管理人として選定できる人の条件は?

納税管理人に資格要件はなく、「居住地が日本にある」ことが唯一の条件です。 確定申告の提出や事務処理程度であれば、個人・法人問わずどなたに任せても問 題ありません。

しかし、税務相談や確定申告書の作成については「税理士の独占業務」にあたる ため、そういった内容を依頼したい場合は税理士を納税管理人として選定する必 要があります。

納税管理人を選任する際に必要な手続きについて

納税管理人を選任する場合は、納税管理人を選定したときから出国の日までに 「納税管理人の届出書」を提出する必要があります。書類や提出先は納める税 金の種類によって異なるため、以下で確認しておきましょう。

【所得税】

所得税の場合は、状況に応じた提出先に「所得税・消費税の納税管理人の届出 書」を提出します。

(ケース1)出国者の納税地とされていた日本国内の住所に親族が居住している場合:その住所地の所轄税務署
(ケース2)出国者に国内不動産の賃貸収入がある場合:その不動産のある所轄税務署
(ケース3)上記のいずれも該当なし:依頼人がそれまでに利用していた税務署

【住民税】

住民税の場合は、1月1日の住所地の市区町村に「納税管理人申告書」を提出し ます。

【固定資産税】

固定資産税の場合は、不動産の所在地の市区町村に「納税管理人申告書」を提 出します。

納税管理人の届出を行った日以降は、税務署や各自治体が発送する書類は納税 管理人宛てに送付されます。なお、何らかの理由で納税管理人を解任・変更す る場合は「納税管理人解任届出書」の提出が必要です。

「バーチャルオフィス」を活用して納税関連書類の管理をスムーズに!

もしも海外に移住をして日本でのビジネスを継続する場合は、登記先住所を 「バーチャルオフィス」に移転されてはいかがでしょうか。バーチャルオフィス とは「実在しない架空のオフィス」のことで、法人登記に必要な住所を低価格で レンタルできます。

特に、日本に「資産管理会社」を所有して不動産などの資産を管理している場合 など、事務所用のスペースを必要としない場合におすすめしたい活用法です。そ の会社を納税管理人として届け出ることで、登記先住所であるバーチャルオフィ スの住所宛てに納税関連の書類が届き、自分自身で書類の管理を行えます(※)。 なお、利用するバーチャルオフィスによっては、バーチャルオフィスの住所に届 いた書類を海外の居住地に転送することも可能です。

※税務相談や確定申告書の作成を希望する場合は、税理士への依頼が必要です。

まとめ

海外在住でありながらも日本に所得があったり相続を行ったりする場合は、日 本での納税や税務申告が発生するため「納税管理人」を選定する必要がありま す。税金に関するさまざまな行為を納税者に代わって行う重要な役割であるこ とから、信頼できる個人・法人に依頼するとよいでしょう。

もしも日本に資産管理会社などの法人を所有している場合は、「バーチャルオ フィス」の住所に登記を行ってご自身で納税関連書類を管理するのもひとつの 方法です。ぜひそういった活用法も視野に入れながら、日本での納税処理を適 切に、そしてスムーズに行いましょう。

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