フリーランス(個人事業主)として働くうえで、節税対策は非常に重要です。しか
し、税制の仕組みは複雑であることから、「具体的にどのような方法があるのかわ
からない」「そもそもどの税金をいくら納める必要がある?」といった疑問をお持
ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はフリーランスの方が納める税金の種類とフリーランス向けの節税対
策について詳しくまとめました。また、自宅を拠点に開業する方におすすめしたい
「バーチャルオフィス」の活用メリットも併せてご紹介します。
フリーランスの方が納める税金の種類は次の通りです。
・所得税
・復興特別所得税
・住民税
・個人事業税
・消費税
・固定資産税
・国民健康保険料
・国民年金保険料
それぞれどのような税金なのか、以下で詳しく見ていきましょう。
所得税は、その年の1月から12月までの1年間で得た所得に基づいて課税される国税 です。年間の収入金額から必要経費や各種控除を引いた金額(課税所得)に対して 税率が適用され、税額が計算されます。
所得税額=課税所得×税率-控除額
※課税所得=収入-必要経費-各種控除
日本では所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税」の仕組みが採用されており、 国税庁が公開している税率は以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
なお、所得税額は基本的に翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をすることで
税額が決定します。このとき、源泉徴収で納めた所得税額が納付額を上回っている
と、確定申告によって還付を受けられる仕組みです。
また、所得税には基礎控除や医療費控除、青色申告特別控除などの各種控除があり
ます。各種控除は自分で申告しなければ適用されないため、どの控除が適用される
のかを事前に確認したうえで確定申告を行うことが大切です。
復興特別所得税は東日本大震災からの復興支援を目的として設けられた税金で、 2013年1月1日から2037年12月31日までの間に課されます。所得税の確定申告時に申 告・納付する必要があり、税額は申告した所得税から税額控除などを差し引いた 「基準所得税額」の2.1%です。
住民税は地方税の一種であり、教育や福祉、道路の整備といった自治体の公共サー
ビスを維持するための税金です。各都道府県へ納める「都道府県民税」と、地域の
市町村へ納める「市町村民税」の両方が合わさって「住民税」として課せられます。
納める金額は前年の所得に基づいて計算される仕組みになっており、具体的な計算
式は以下の通りです。
住民税額=(前年の所得金額-所得控除)×税率+均等割
上記のうち、税率は課税所得に対して10%(都道府県民税が4%、市町村民税が6%)
です。また、均等割は自治体によって異なりますが、通常は5,000円~6,000円程度
となっています。
なお、フリーランスの場合は毎年6月頃に自治体から住民税の納付通知が送られて
くるため、所定の方法(銀行振込やコンビニ支払いなど)で納付します。
個人事業税は地方税の一種で、主に特定の事業を営む個人事業主が事務所や事業所
が所在する都道府県に対して納める税金です。納付対象となるのは事業所得が290
万円を超える場合のみで、290万円以下の所得の場合は課税されません。
また、個人事業税の課税対象とされる業種は「法定業種」と呼ばれ、弁護士業やコ
ンサルタント業、デザイン業、ライター業、建設業、飲食業といった70種類の業種
が該当します。税率は3~5%で、たとえばコンサルティング業やデザイン業は5%、
広告業は3%など、業種によって異なります。
なお、フリーランスは毎年3月15日までに確定申告を行い、その内容に基づいて個
人事業税の申告が必要ですが、所得税の確定申告を行っている場合は個人事業税の
申告は不要です。納税は通常、8月と11月の年2回に分けて行われます。
消費税とは、消費者としての立場で受けたサービスに対して支払う税金であり、働
いた分のサービスに対してクライアントから税金を受け取る立場にあるフリーラン
スもこの税金を負担する必要があります。
ただし、フリーランスの方すべてが納税対象になるわけではありません。以下の条
件のいずれか1つでも満たしていれば免除されます。
・開業から2年未満
・2年以内の年間売上が1,000万円未満または、半年間の売上が1,000万円未満
なお、消費税の納税額は以下の計算式で算出します。
納税額=預かった消費税(売上税額)-経費として支払った消費税(仕入税額)
ちなみに、2023年10月から施行されているインボイス制度により、取引先からイン ボイス(適格請求書)の提出を求められることが増えました。インボイスを発行で きるのは消費税の課税事業者のみで、免税事業者は発行できないため、取引先がイ ンボイスを必要とする場合は課税事業者になる必要があります。
固定資産税は土地や建物などの固定資産や、事業用の機器や備品といった償却資産
に課せられる地方税です。具体的には、1月1日時点で以下の資産を所有している場
合に課税されます。
・土地:宅地・田畑・山林など
・家屋:住宅・店舗・事務所など
・償却資産:事業用の機械・器具・備品など(取得価額が10万円以上のもの)
固定資産税は次の計算式で算出されます。
固定資産税額=課税標準額×1.4%(標準税率)
課税標準額は原則として固定資産評価額ですが、住宅用地などは軽減措置が適用さ れる場合があります。また、納付時期は原則として一括納付か年4回の分割納付と なっており、納税通知書は毎年4月から6月頃に送付されます。
国民健康保険料は税金ではないものの、フリーランスにとって重要なコストです。
会社員のように社会保険へ加入できないことから、国民健康保険に加入して保険料
を納める必要があります。
なお、国民健康保険料は加入者の前年の所得や居住する市町村の基準に基づいて計
算されます。たとえば前年に会社員として所得があった場合は、フリーランスとし
て開業した直後でも金額が高くなる可能性がある点に注意が必要です。
国民年金保険料も税金ではありませんが、フリーランスの老後の生活資金を支える
重要な社会保障であり、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入する
が義務付けられています。フリーランスの場合は会社員のように企業と折半して保
険料を支払うことはできず、全額を自己負担しなければなりません。
保険料は定額制となっており、2024年度の保険料は月額16,590円です。年金の受給
資格を得るためには最低でも10年間の保険料納付が必要となるため、フリーランス
としての活動を続ける限り、計画的に保険料を支払うことが求められます。
ここでは、フリーランスにできる主な節税対策を6つご紹介します。ぜひ積極的に 取り入れて、税負担の軽減を図りましょう。
フリーランスの確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類の方法がありま
すが、節税したい場合は「青色申告」を選択することをおすすめします。青色申告
を行うことで、所得から最大65万円の控除を受けられたり、家族に対して給与を支
払った場合にその給与を必要経費として計上できたりといったさまざまなメリット
があります。
ただし、青色申告特別控除を受けるためには、申告する年の3月15日までに「所得
税の青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を得なければなりません。また、
65万円の控除の対象となるには複式簿記による帳簿の記帳も必要であるほか、実際
に確定申告を行う際には年間収入や経費などをまとめた「青色申告決算書」を添付
してe-Taxで申告、または電子帳簿保存を行って申告をすることが求められます。こ
れらの要件を満たさなかった場合、青色申告特別控除は最大55万円、あるいは最大
10万円になるため注意しましょう。
なお、白色申告の場合は節税を行えないものの、複雑な書類を作成する手間を省け
るメリットがあります。所得金額や申請手続きの手間などを考慮して、自身に合っ
た申告方式を選ぶとよいでしょう。
フリーランスとして活動する場合、経費をしっかりと管理し、漏れのないように計
上することが非常に重要です。収入から業務に関連する経費を差し引くことで課税
対象の所得を減らせれば、支払う税金を軽減できます。
なお、フリーランスが経費として計上できる主な費用は以下の通りです。
事務所の家賃や光熱費は、全額分を経費として計上できます。ただし、自宅の一部
を事務所として使用している場合は「家事按分」による経費計上が可能で、その業
務で使用する面積や時間に基づいて按分できる仕組みです。
たとえば自宅の60㎡中15㎡を事業用に使っている場合、家賃の25%を経費として計
上できます。
携帯電話やインターネット料金も、事業用として利用している分は経費として認め られます。ただし、私用と業務用が混在する場合には家事按分が必要です。
業務のための移動にかかる費用(電車代・タクシー代など)や、仕事での自家用車 使用にかかる費用も経費とすることが可能です。
文房具やソフトウェア、10万円未満のパソコンなどの消耗品も、経費として計上で きます。
なお、経費を漏れなく計上するためには、すべての支出における領収書・請求書を しっかりと保管しておくことが重要です。また、月次や四半期ごとなど定期的に経 費を見直し、計上漏れがないか確認するとよいでしょう。
適切な控除を申告することも、フリーランスの節税対策として大変重要です。具体
的には、以下の所得控除を活用することで課税所得が減り、税金の負担を軽減でき
ます。
・基礎控除(48万円/すべての人が対象)
・青色申告特別控除(最大65万円)
・扶養控除(扶養家族がいる場合適用)
・社会保険料控除(国民健康保険・国民年金など)
・医療費控除(年間10万円以上の医療費が対象)
・生命保険料控除(保険料の一部を所得控除)
・寄附金控除(ふるさと納税含む/住民税・所得税の軽減が可能)
小規模企業共済制度は、フリーランスや中小企業の経営者を対象とする積立型の共
済制度で、積み立てた掛け金は将来的に退職金や廃業時の資金として使用できます。
この掛け金は所得控除の対象となるため、ぜひ活用するとよいでしょう。
なお、掛け金は1,000円から70,000円まで自由に設定でき、経済状況や収入の変動に
応じた調整も可能です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)への掛け金も全額を所得控除として申告でき、最大で
年間81.6万円の控除を受けられます。iDeCoにおいては投資信託や定期預金、元本保
証型の年金資産など多種多様な運用商品があり、自身のリスク許容度に応じた資産
運用を行えることが大きな魅力です。
また、運用によって得た利益は非課税であることから、⾧期的な資産形成における
メリットが大きいことも注目したいポイントです。
フリーランスとしての事業収入が大きい場合、法人化するのもひとつの節税対策に なります。その主な理由は以下の通りです。
法人化すると社⾧の役員報酬を経費として計上でき、法人の課税所得を減らすこと が可能です。また、役員報酬には給与所得控除が適用されるため、個人の所得税も 減少します。
法人のほうが個人に比べて経費の認められる範囲が広く、課税所得をさらに抑えら れます。
フリーランスの赤字は3年間繰越可能ですが、法人の場合は最大で10年間の繰越が 可能です。将来の利益と相殺することで、税負担をさらに軽減できます。
一定の要件を満たせば、法人化後、初めの2年間は消費税の納税義務が免除されま
す。フリーランスのままだと、前々年の売上が1,000万円を超えた場合に消費税納付
義務が発生するため、法人化のタイミングを考慮すると節税につながるでしょう。
ただし、法人化の際には設立コストが発生するほか、維持費がかかったり、事務手
続きが増えたりする点に注意が必要です。ひとつの目安として、所得が600~800万
円を超え、税負担の軽減について真剣に考え始めたタイミングで法人化を検討する
とよいでしょう。
フリーランスとして活動している方のなかには、自宅兼事務所として開業届を提出
したり、法人登記を行ったりする際に「自宅の住所で申請したくない」とお考えの
場合もあるでしょう。とはいえ、オフィスを借りるとなると高額な費用がかかるた
め、開業や法人化をためらっているケースもあるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいサービスが、事業用の住所をお手頃価格で借りられる「バー
チャルオフィス」です。自宅を拠点に事業活動する方がバーチャルオフィスを利用
することにより、以下のようなメリットを得られます。
バーチャルオフィスの費用は一般的に安価で、契約時に支払う登録料は5,000円~ 10,000円程度、毎月の利用料金も数千円程度です。オフィスを借りる場合と比較す ると大幅にコストカットできるため、収益が不安定な創業期でも利用しやすいで しょう。
自宅兼オフィスとして活動する場合、自宅のプライバシーが脅かされるリスクがあ
ることに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。バーチャルオフィスを利用
すれば、登記申請時や名刺・ホームページ掲載時にバーチャルオフィスの住所を使
用できるため、自宅の住所が公になることはありません。
自宅のプライバシーを保護しながら安全に事業を運営したい方にとって、非常に大
きなメリットを実感できるでしょう。
バーチャルオフィスの拠点はさまざまですが、ひとつの傾向として銀座や青山、新 宿といった都心一等地に多く点在しています。そういったビジネスの中心地に拠点 を置いている会社は「事業が安定していそう」といったイメージを与えやすく、集 客・交渉がしやすくなることも大きな魅力です。
スピーディーに利用を開始できることも、バーチャルオフィスにおいて注目したい ポイントです。実際のオフィスを借りる場合は審査や契約などに数週間かかること がありますが、バーチャルオフィスでは契約したその日中、あるいは数日後から利 用を開始できることが多く、即座にビジネス活動をスタートできます。
フリーランスが支払う税金には、所得税や住民税、個人事業税、消費税といっ
たさまざまな種類があるため、まずは納付する税金について正しい知識を持つ
ことが大切です。そのうえで、青色申告などの節税を踏まえた確定申告を行っ
たり、漏れのない経費計上や小規模企業共済への加入、法人化の検討といった
各種対策を講じたりすることで、効果的に税負担を軽減できるでしょう。
もし法人化に伴って事業用拠点を設ける必要がある場合は、バーチャルオフィ
スを利用するのもひとつの方法です。ぜひ自身の状況に合った起業スタイルや
節税対策で、収益の最大化を効率的に目指しましょう。